もしもよその人がわたしの家の玄関をみたならば、きっと「なんという大家族なのだろう」と誤解することだろう。
確かうちには妻がひとりと娘がひとりしかいなかったはずなのだが、玄関にある靴はゆうに1ダースを超えているからだ。しかもこれには下駄箱の中のものや、押し入れの奥に仕舞われたものが含まれていない。そりゃあ、わたしだって持っている靴は一足や二足ではないけれど、少なくとも玄関に出ているのは仕事用とプライベート用の二足だけなのだ。もしかしたら、うちの妻も娘も足が二本だけではないのかもしれない。
うち玄関の下駄箱の上には、妻が買ってきた風水のお守りやら、妙なカエルの置物やらが置いてあるのだが、同時にそこはカギ置き場にもなっている。もっともわたしがそこにカギを置くことはなく、使っているのはもっぱら妻と娘である。
先週、クルマで地方のアウトレットまで買い物にいった帰り、自宅の玄関に入った途端、娘がクルマの中に携帯を忘れたと言いだした。面倒だったのでカギだけ渡して自分で取りに行かせたのだが、もちろんそのカギを使ってクルマを動かしてみようなどという、子供っぽいイタズラ心を出すタイプではないので安心していたのだが、トラブルは思わぬ方向からやってきた。
次の日会社へ行こうとしてクルマのカギがないことに気が付いた。すぐに昨夜のことを思い出したが、娘はすでに出掛けていた。確か高校の部活の朝連だとか言っていた。メールすると「いつもの場所に置いた・・・と思う」との返事だが、自分がいつも置く場所に、わたしのカギを置きっぱなしにするセンスがわからない。
下駄箱の上をくまなく見たが、わたしのクルマのカギはなかった。時間がないので選択に迫られた。娘の部屋を探すか、1ダース以上ある靴をひっくり返すかだ。
結局クルマのカギは長靴の中から出てきた・・・という妻からのメールを、わたしはその日満員電車のなかで見ることになるのだった。
神奈川県警察/空き巣発生状況